34 しんりてすと 解

私は喉が渇いていた。

あー喉渇いた。疲れた。ちょー疲れた。喉渇いた。ぶっちゃけ水分欲しくて、もう限界なんですけど。足す用も枯渇するくらい限界きてるんですけど。そのくせほんのり地肌は汗ばむんですけど。喉渇いたんですけど。

そんなことをぶつくさ思いながら家路を急いでいると、視界に飛び込んできたオアシス。自動販売機。

助かった。愛してる。

どっしりと構えた長方形の君に駆け寄り、その冷たいフォルムを指でなぞる。お茶がいい。お茶がいいわ……。
私がそう、囁くと、長方形の君は調子っ外れの関西弁でこう言った。

「いつもお仕事ごくろーさ…」

ほんまでっせ。

彼の言葉を遮り、私は震える指でなけなしの150円を投入し、目当てのボタンを連打した。ピッ。ピピピピピッ。

ガシャコンッ。

「まいどありー」

やっと手にした水分!ありがとう!ありがとう!

私は、ようやく水分補給ができるという安堵から、目頭を熱くし、ペットボトルのお茶を掴んだ右手に、より一層力を込めた。

……ん?

皮膚にひんやりと当たるその感触には確かに覚えがあった。しかし、それは私が求める手触りとはほど遠い。

まさか?

嫌な予感が脳をかすめる。

いやいや、まさか。そんなわけないだろう。確かにお茶のボタン押したっつーの。ケンシロウもたじろぐくらいの身のこなしでボタン押したっつーの。自販機早押し村民大会で2位の実績持ってるっちゅーの。

そんな私がボタンを押し間違えるなんて初歩的なミス、するはずがないじゃない。そうでしょう。そうだわ。何とか言いなさいよ自販機!

「いつもお仕事ごくろーさん!」

やかましいわ。なんで缶コーヒーやねん。

……ま、飲めればそれだけで有難いんです。

【と言うわけで、心理テストの答えは1番の缶コーヒー】

【心の中でつぶやいた一言は、やかましいわ。なんで缶コーヒーやねん。……ま、飲めればそれだけで有難いんです。】

で宜しくお願いします。
乃里絵でした。